色版を作りましょう

今回の色版は八枚。年賀状にはちょっと贅沢な気もしますが。 勿論、多色木版に初めて挑戦する人なら、初めは二、三版で十分良いと思います。 ではまず版木の準備から。

第四段階  版木の準備

#13

シナベニアの版木、(今回は9ミリ厚を使っていますが、6ミリでも十分です)を4枚準備。写真#13のように1枚に二版分を彫ります。

版木が大きい方が彫りやすいのです。

四枚の版木のすべてに見当を書き込む。 

見当鑿

見当の様子。 見当鑿が無ければ普通の間透きでも何でも代用できます。深さは一ミリほど。黒く色をつけているのは摺の時に見当の位置を見やすくするためです。

余談ですが、この見当と言う仕組みは、江戸時代に、あの才人平賀源内が、友人で錦絵の創始者として知られる鈴木春信の求めに応じて考案したとも言われています。

#14

第五段階  墨版のデザインを色版の版木に転写する

色版の為のデザインを転写する方法は色々有ります。一般に行われている方法を挙げて見ます。 

1.  墨版を薄い和紙に摺り、裏返して版木に糊付けする。 余分な厚みは湿り気を与え掌や指で擦り取る。

2.  墨版をトレーシングペーパーに摺取り、カーボン紙を挟み、必要な部分だけを版木に引き写す。

3.  墨版を油性インクでトレーシングペーパーまたは普通紙に摺取り、これを色版版木に乗せ、裏から馬簾ですって転写する。

4.  墨版をカーボン紙でトレーシングペーパーに摺とる。それを3と同じ要領で、馬簾、或いはスプーンの腹や指の爪を用いて版木に転写する。

今回は3の方法で転写します。ただ、紹介も兼ねて一部、2や3の方法も用いるつもりです。

#15

準備する物は、見当を彫り終えた版木、トレーシングペーパー4枚(普通紙も可)、油性インク、ドライヤー(有ればインクの乾きが早いが無くても可)、馬簾、セロハンテープ、ガラス板、ローラー、椿油(馬簾に少し塗ると滑りが良くなる)、新聞紙数枚。

版木の木目に注意しましょう。今回は風の表現で、横に入る線が多いので彫りやすい様に横目で取りました

#16

版木に油性インクをローラーで乗せトレーシングペーパーに摺りとる。この紙は二、三回繰り返し転写に使うことも出来ますが、やはりだんだん薄くなってしまいます。

#17

図柄の摺り取られたトレーシングペーパーを色版用の版木に乗せ二箇所ほどテープで止める。この時きちんと見当に合わせて紙を置く事が大切です。

#18

上から馬簾で擦り図柄を版木に写し取る。スプーンの腹や爪の先を使えば、細かい所も綺麗に転写できます。
用意した八枚の版木全てに、同様の手順で転写。

第六段階  各版木にどの色を取るか、色分けをする。

#19

写真#19  背景の空と雲の図柄を下絵からトレーシングペーパーに引き写し、それを赤のカーボン紙で版木に書き写した。

色分けされた版木の様子。

彫り上がった各版木の様子

黄土・緑

薄茶

水色

明るい緑・赤

セピア

朱赤

黄色・薄ねず

オレンジ・濃い青

ここで、ここまでの作業で使われた幾つかの技法について、更に詳しく紹介してみましょう。

他の人はあまりやらない様なのですが、私はシナベニアの版木は、いつも水で溶いたボンドを塗って表面を強化して使っています。

濃さは牛乳より少し薄い感じです。 図柄の周りに刀が入り、さらいの前に塗るのが良いようです。

彫味が明らかに違ってきます。 細かい線も塗らないときよりはしっかり残せますが、やはり桜の版木には遠く及びません。

ボンドを塗り乾かしているところです。時間が有れば自然に乾燥するのを待っても良いのですが。

乾いたら、表面をサンドペーパー(120番から240番程度)で磨きます。

周りのさらいは、駒すきや浅丸の刀を用います。この時、池のように、中央部分が深くなるように仕上げていきます。

#20

#21

#22

#23

#24

#25

#26

#27

#28

さらいの様子。 写真26,27. しゃしん28は彫りあがり。 この時使った刀を一緒に示してみました。

次にカーボン紙を使った転写を見てみましょう。この方法は油性のインクを用いての転写に比べて、手間がかからず、手っ取り早く出来ます。 ただ、大きな画面全体の転写には向いていないようです。

彫り上げた版木(他の版に転写したいもの)に墨版の転写に使ったトレーシングペーパーを乗せます。
この時、見当に正確に合わせる事が大切。 版木とトレーシングペーパーの間にカーボン紙を、カーボンの面を上にして挟みます。(写真29)

何箇所かテープで止め、馬簾で図柄をすりとります。新しいカーボン紙を用いた方が良いでしょう。、古いものだと濃く摺り取る事が出来ません。(写真30,31)



#30

#31

#32

カーボン紙で摺ったもの(写真32) を、墨版の転写の要領で、必要な版木に馬簾を用いて転写します。

この場合、油性のインクよりは転写し難いのですが、指の爪やスプーンの腹で擦ると綺麗に転写できます。

転写が済んだ版木の様子(写真33,34)

#33

#34

色版の彫に付いてはこれで終わりです。

摺りの様子は年賀状 摺りを御覧下さい

2007 10 27

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